南国の城下町・飫肥へ その1/DENKEN WEEK 2021
宮崎県日南市の城下町・飫肥(おび)で現在開催されている「DENKEN WEEK 2021」をより楽しむべく、わたくし旅ライターの宮本喜代美が飫肥の魅力をお伝えします。
九州の小京都と称され、昭和52年(1977)に九州で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された、伊東氏五万一千石の城下町・飫肥。古い石垣の武家屋敷や格式ある薬医門など江戸〜明治期の佇まいが残りながら、庭木にはソテツなども見られ、南国ならではの趣がじつに魅力的だ。
飫肥を代表する武家屋敷「豫章館(よしょうかん)」もそのひとつ。明治2年(1869)に造られた伊東氏の旧邸で、武学流の作庭といわれる愛宕山を借景にした枯山水の庭園が見事。ソテツやサルスベリなどが植えられ、その植生に南国らしさが感じられる庭となっている。また屋敷も庭も広々としてゆったりとした造り。のびやかな空間に身を置けば、宮崎特有のおおらかさが五感で体感できるだろう。
「豫章館」から徒歩すぐの「飫肥城」へも足を運ぼう。昭和53年(1978)に復元された飫肥のシンボル「大手門」や、かつての殿様の暮らしが垣間見られる「松尾の丸」も素晴らしいのだか、「松尾の丸」の奥、旧本丸跡にある「飫肥杉木立」はマストで行きたいスポット。杉木立を渡る清浄な風、見上げると木々の間から南国の濃い青空。地元でパワースポットといわれる所以がよくわかる、なんとも心地よい場所である。散策しながらデトックス&パワーチャージを愉しもう。
武家屋敷や白壁が続き、水路には錦鯉が悠々と泳ぐ飫肥の城下町。この整然とした美しさは、法律や条例ではなく「城下町にふさわしい町並みを創ろう」という地域住民の良識で保たれている。看板の色彩を統一したり、市民による清掃活動が継続して行われているほか、関係機関と協議を重ねて電柱を地中化するなどし、江戸の趣きを取り戻したそうだ。住民により大切に守られている城下町を歩き、飫肥の歴史や文化に思いを馳せたい。
ちなみに「豫章館」や「松尾の丸」の入場は有料だが、11月28日(日)までは「DENKEN WEEK 2021」により入場無料となっている。この機会に旅をして、飫肥の良さを味わおう。